ネット上で氾濫する間違った4つのうつ病対処法
2021.11.11
こんにちは。カリフォルニア州公認心理カウンセラーの荒川龍也です。
日本のメンタルヘルスの理解やシステムの遅れは相変わらず顕著で、それが原因で日本では誰もが心理カウンセラーと名乗れてしまう現状は非常に危険です。危険な理由の一つとして、そういった自称心理カウンセラーが間違った情報をあたかも正しいことかのようにネット上でいくらでも話せてしまう点にあります。今回は、うつ病についてよくある間違った情報についてお話します。
*日本のメンタルヘルスの遅れに関しては以下をご覧ください*
- なぜアメリカのカウンセリング資格を持つ心理カウンセラーからカウンセリングを受けた方が良いのか
- 日本でずっと治療を受けているけど、改善されないという方へ
- 日本でずっと治療を受けているけど、改善されないという方へ(2)
- 日本でずっと治療を受けているけど、改善されないという方へ(3―子ども編
「今のままで良いよ」
こういわれて一瞬はホッとするかもしれません。「このままでいいんだ」「今のままで頑張っていこう」そう思えるかもしれません。しかし、残念ながらこれはよくある間違ったメッセージです。「そのままでいい」。。。果たして本当にそうでしょうか。そもそも今のままでいいのなら初めから悩んでいませんし、うつ病になる必要もありません。今ある何かが上手くいっていないから困っているはずです。それを無責任に今のままでいいと言われ、それを受け入れた所で、どのように物事が改善していくのでしょうか。
悩みの種やうつ病の原因とは、何か歯車がかみ合っていないからこそ起こるものです。多少嫌な気持ちになったとしても、何かを変えていかなければ、「満足のいかない今」が良くなることは期待し難いです。
「成功体験を積めばいい」
他にもよく聞く間違った情報の一つがこれです。実際に何かうまくいく事で気持ちが良くなるのは当然の事です。しかし、それでうつ病が治るなら今頃うつ病は珍しい病気にできているはずですが、もちろんそんなことはありません。成功体験が続けばうつ病は治るほど、うつ病は単純で簡単なものではありません。
うつ病になる原因は人それぞれです。育てられた環境、今いる状況、考え方の癖、行動の癖などなど、非常に多くの原因がある中で、一つの事をすればうつ病が治る事などあり得ません。それを、成功体験を積めばうつ病が治るなどという論調は非常に安易で、うつ病で困っている人に失望するための幻想を与えているようなものです。
「自信をつければいい」
自信をつければうつ病が治るという論調もよく聞きます。しかし、そもそも論として自信がないことがうつ病で困る方の特徴の一つである中、自信をつけろと言うのは無茶苦茶な話です。また、この論調は「自信をつければ落ち込まない」という、あたかも「自信」が全てを解決してくれるかのように捉えられがちですが、決してそんなことはありません。前途したように、様々なファクターが影響した結果としてうつ病という状態にあるので、一つの何かが解決してくれるわけではありません。
自信というのは、何か一つの事を成し遂げたからつくのではなくて、小さなことでも大きなことでも、何かを達成するために一つ一つの努力を積み重ねていった結果ついてくるものです。
「考え方・捉え方を変えればいい」
最後に、考え方を変えればうつ病が治るという論調です。確かに、考え方や捉え方を変える事はうつ病にある程度の効果は望めます。カウンセリング中にここにフォーカスする事を認知行動療法といいます。最近では正規のトレーニングを受けていない自称心理カウンセラーもこの事をネット上で訴えているのをよく見かけます。しかし、これには大きな落とし穴があります。
認知行動療法というのはカウンセリングの技法の一つであり、カウンセリングという場で受けるから効果があるのです。それを、ネット上で「〇〇な状況には□□に考えると良い」と言われ最初は納得するかもしれませんが、結局長続きしません。これは友人に相談し「そういう時はこう考えればいい」と言われても結局何も変わらないのと同じです。
様々な情報が飛び交うこの時代、正しい情報のみを取り入れて頂く事が心の健康にとって非常に大事な事です。
荒川龍也
カリフォルニア州公認心理カウンセラー