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カリフォルニア州公認カウンセラーのブログ

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日本でずっと治療を受けているけど、改善されないという方へ(2)

日本でずっと治療を受けているけど、改善されないという方へ

こんにちは。カリフォルニア州公認心理カウンセラーの荒川龍也です。

以前のブログでは、なぜアメリカの資格を持っている心理カウンセラーから心理カウンセリングを受けた方が良いかについて書きました。また、この記事で、なぜ日本の医師から精神医療を受けてもなかなか治らないかを説明させて頂きました。

今回は、なぜ日本で心理カウンセリングを受けても心の病がなかなか治らない事が多いか、その原因の可能性をお伝えしたいと思います。

民間資格&無資格者

アメリカでは心理カウンセリングは既に医療とみなされており、この記事でもお話しした通り、非常に厳しい道のりを乗り越えた者しか心理カウンセラーとして働けないようになっています。

しかし、残念ながら、日本は法整備が非常に遅れており、民間資格が乱立しています。極端な話、誰でも受けることができてしまう通信講座だけで、多くの方が聞いたことがあるような資格さえも取れてしまうのです。さらに残念な事に、人を扱う医療行為であるにもかかわらず、資格取得以前に必要であるはずのインターンシップをしなくても取れてしまう民間資格も多数存在します。さらに、全くもってして正規のトレーニング(正規のトレーニングとは欧米では当たり前の大学院卒業という意味)を受けたことがないような人が、独自に開発したメソッドなどと宣伝文句を言い、それを資格化することにより、資格ビジネスとしてしまっているケースも大変多く見受けられます。

さらに悪いことに、大学で心理学を勉強したから・独学で学んだからといった理由だけで、無資格にも関わらず心理カウンセリングができると言ったり、資格がないにもかかわらず「自分も○○で悩んだから」から同じ悩みの人を助けられるという理由で、心理カウンセラーと名乗っている方も多くいます。

当然の事ながら、このような民間資格者&無資格者からサービスを受けても、効果がないであろうどころか、むしろ悪化してしまっても不思議ではないでしょう。例えるなら、医学部に入れなかった学生から手術を受けるようなものです。

民間資格者&無資格者によるネガティブな影響

このように、日本では民間資格を有しているだけで心理カウンセラーと名乗れてしまいます。その結果、インターネット上では間違った情報があたかも正しいかのように主張されてしまっています。もちろん、我々のような心理カウンセラーであれば、何が正しくて何が間違っているかを判断できますが、そうでない方には判断できるわけもありません。

これは実は大問題で、ただでさえ心についての理解が遅れている日本が、間違った情報が広まれば広まるほど、それは正しい方向から離れていく事を意味します。そして、こういった間違った情報を得て、心の病を間違ったアドバイスで治そうとしても、治るわけがありません。実際、日本の方にカウンセリングをする際には、得た情報の中で何が正しくて何が間違っているかをお教えしなくてはいけない機会が大変多くあります。

カウンセリングの頻度

心理カウンセリングが効果的なものであるためには、クライアントさんは週に1度カウンセリングを受けなくてはいけません(心の病のレベルにもよりますが、重度の場合は週に2度や3度も可能です)。

しかし、このカウンセリングの頻度が一月に一回等、とにかく頻度が足りないという例を何度も何度も聞いてきました。週に一度受ける事で、カウンセラーとの信頼関係を築いていきます。そして、この信頼関係自体が心の病の治療に繋がっていきます。逆にいえば、この信頼関係なくして、心の病を治す事は非常に難しいです。どれだけ受けていても治らない理由の原因は頻度の可能性もあるでしょう。

カウンセリングの技法

カウンセリングとは、人の話を聞くのが仕事というイメージがあると思います。しかし、人の話の聞き方一つでも非常に多くの技法があります。アメリカの大学院ではその多くの技法を学ぶことができます。また、アメリカの心理カウンセラーは多くの場合、様々な技法を使うことができます。これはクライアントにとっては非常に良い事で、例えAという技法がうまくいかなくても、Bの技法が合うかもしれないから、Bを試してみるということが可能になります。もちろん、これらの技法は、ヨーロッパやアメリカで始められもう長年使われ続け、多くのクライアントを救ってきたものです。

しかし、残念ながら日本では、一つの技法にこだわりすぎてしまう傾向があるようです。〇〇のような症状にはAの技法が良いけど、Bの技法はよくないだろう。△△のようなクライアントさんには、Cの技法が合うかもしれない。こういった具合に、クライアント側がカウンセラーの技法に合わせるのではなく、カウンセラー側が柔軟であるべきです。一つの技法にこだわりすぎてしまっているようでは、治るものも治らない事があっても不思議ではないでしょう。

スーパービジョン無しでも取れてしまう臨床心理士という資格

この記事でも書きましたが、アメリカではスーパービジョンを受けないと資格が取れないようにできています。大学院を卒業後、短くても最低2年は受けなくてはいけないこのスーパービジョンを通じて、多くの事をスーパーバイザーから学んでいきます。

しかし、残念ながら、日本ではスーパービジョンを受けなくても資格が取れてしまいます(大学院卒業が必須である臨床心理士の場合です)。どのような専門家もまずは経験あるベテランから学ぶべきですが、それをやらなくていいという事は、間違った言動を誰も正してくれない事になります。これでは心理カウンセラーとしてなかなか成長できず、質の高いカウンセリングを提供するのが難しくなってしまいます。

公認心理師という危険な国家資格

最近、公認心理師という国家資格が日本でできましたが、残念ながらこの資格を持っているから安心して質の良い心理カウンセリングを受けられるというわけではありません。

まず、この資格は大学を卒業するだけで取れてしまいますが、これは非常に危険な事です。欧米では大学院卒業が必須です。心理カウンセラーは密室空間でクライアントさんと一対一で話をする事で、クライアントさんは少しずつカウンセラーを信頼していくことができます。しかし、このような信頼関係を悪用してしまう心理カウンセラーも残念ながら存在します。こういった「心理カウンセラーになるべきではない人」を判断するのが大学院の教授の役割となっています。心理カウンセラーになるための大学院は必ずしも点数が良いから入れるというわけではありません。しかし、誰でも入れてしまう大学を卒業しただけで資格が取得できてしまうようでは、このような被害者が増えてしまっても不思議ではないでしょう。

また、「相談業務」をしていたからという事で、全く心理カウンセリングを提供していなかったにもかかわらず公認心理師の資格を取得できた人もかなりいると聞きます。このような人たちから心理カウンセリングを受けても、悪化してしまう危険すらあるでしょう。

以上、なぜ日本で心理カウンセリングを受けても心の病がなかなか治らない事が多いかを説明致しました。
正しい治療を受けられるきっかけにして頂ければ幸いです。

 

荒川龍也 LMFT (#82425)

カリフォルニア州公認心理カウンセラー

注:もちろん日本にも、しっかりと大学院に行き、正規のトレーニングを受け、資格を取得した後も勉強を続け、最新の治療法を学び実践されている方もいらっしゃいますので、誤解のないようにお願い致します。


 

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