海外駐在員のうつ病の特徴―海外駐在員とその家族の心の健康 (10)
2023.09.14
こんにちは。カリフォルニア州公認心理カウンセラーの荒川龍也です。
海外で働くという事は、非常に煌びやかにみえるのと同時に大変な事も多くあります。その一つに、環境の変化等が原因で心の病になってしまう事が挙げられます。しかし、実際に心の病なのかどうかわからないというご相談をよく頂くので、何回かにわたって心の病の見分け方についてご説明差し上げたいと思います。今回はうつ病の見分け方についてお話ししたいと思います。
うつ病の症状
よく一般的に言われているうつ病に関しましては、こちらのブログをご覧ください。こちらのブログではうつ病と不安障害の診断基準等について解説しております。
また、一般的に理解されているうつ病とは違い、「低飛行なうつ病」もよく見受けられます。それに関してはこちらのブログをご覧ください。
海外駐在員のうつ病の特徴
こちらでは、特に海外駐在員の方のうつ病の特徴から、代表的なものをいくつかご説明いたします。
新しい文化に適応できていない苦しみ
例え自分の意志で海外生活を始めたとしても、その国の文化に適応するのは簡単な事ではありません。その国の主な言語が思うように使えなければ、それはさらに難しくなることでしょう。それが原因の一つとなり、うつ病を発症してしまう方は残念ながら少なくありません。
孤独
海外に駐在することによって、日本にいて当たり前に会う事が出来ていた友人や家族とは、時差等の理由もあり以前のように頻繁には連絡ができなくなります。また、駐在員であるがゆえに仕事が非常に忙しく、新たな土地で友人を一から作り直す気力もなくなってしまいがちです。その結果、孤独を非常に感じやすくなってしまいます。孤独とはうつ病の大きな原因の一つであることが多く、海外駐在員の方もそれは例外ではありません。
好きな事ができない
日本在住の際に当たり前に楽しむことができていた趣味が、新たな国で必ずできるというわけではありません。例えば、ドライブが好きであったのなら、まずは免許を取り、車(バイク等)を買わなければいけません。しかし、新しい国で生活を始めてすぐにそれができるようになるわけでもありません。その間に好きな事ができないというのは非常に苦しい事であり、これもうつ病の原因の一つになりかねません。
よくある誤解
日本の精神医療・心理学の大幅な遅れが原因で非常に多くの間違った情報が「正しい知識」として理解されてしまっています。その結果、海外駐在員の方にも悪影響を及ぼしてしまっているのが現実です。ここでは代表的なものについてお話ししたいと思います。
様子をみたから治るわけではない
心の病の症状を何個も経験していてなおかつその状態が長期間にわたって経験してしまうほど苦しい状況だとしても、心の専門家から治療を受ける事を拒み、「様子を見る」という方が非常に多くいらっしゃいます。しかし、それで心の病が治るわけではありません。それどころか、放っておいてしまって悪化した方からの連絡も非常に多くあります。
例えば、骨折したら放っておかず、整形外科に行きます。風邪の酷い症状が続けばまずは内科医に相談し、必要であればさらなる検査をすることでしょう。心の病も同じです。専門家からの治療が無ければ治らない事が非常に多いのです。
仕事を休んでも治ると決まっているわけではない
「様子を見る」と似ていますが、心の病になった場合、今いる環境から一時的に回避できれば治ると誤解されている方が非常に多いですが、必ずしもそうとは言い切れないです。
心の病とは様々な原因が複雑に絡み合って引き起こされます。そしてそれらの原因とは、心の専門家と一緒に探していかないと本人だけではなかなか見つけにくいものです。非常に多くの場合において、仕事だけが心の病の原因ではないのです。よって、心の専門家からの治療を受けず、仕事を休み、ある程度症状が回復してから復帰してもまた心の病になってしまう事も多々あります。なぜなら仕事以外の原因を解決できていないからです。
一番注意するべき事
身体的な病気やケガは患者自身で診断できないしするべきではないのと同じように、心の病もクライアントさん自身で診断できるものではありません。あくまでも参考程度にして頂き、症状がいくつも当てはまるようでしたら心の専門家に相談して頂きますようお願いいたします。
心の専門家に相談する前にご自身で診断テストをまずは受けてみたいという方は、こちらを参考にされてみてください。
以上、正しい知識を得て頂ければ幸いです。
荒川龍也
カリフォルニア州公認心理カウンセラー