家族ができること~子ども編~―海外駐在員とその家族の心の健康 (13)
2023.12.14
こんにちは
カリフォルニア州公認心理カウンセラーの荒川龍也です。
海外駐在員とその家族の心の健康シリーズ、13回目の今回は「心の病になってしまった人のために家族は何ができるのか」の子ども編です。
親子関係の向上
ブログやコラム等で何度も申し上げていますが、子どもの心の病というのは非常に多くの場合において親が主な原因であり、親が変わらなければなかなか治療がうまくいくことはありません。子どもは週に一回の50分のカウンセリング以外では、学校に行こうが習い事に行こうが、最終的には親の傘の下に帰ってきて、親の課したルールの下で生きているからです。この親の課している何かの歯車が合わなくなったときに、子どもは心の病になってしまうのです。これはどこの国にいようが変わりません。
では親が変わるためには何をするべきか、それは親子関係の向上です。
もし親子関係があまり良くないと自覚がある場合、なぜ良くないのかを考えご自身が変えられる部分を変えていくべきでしょう。逆に、ご自身では親子関係は十分な状態にあるとお考えの場合は、どうやったらもっと関係を良くできるかを考えたほうが良いでしょう。どちらの場合においても大事な事はまず話を聞いてあげる事です。話を聞いてもらえずに、「○○しろ」や「□□はだめ」と言われ続ければ、誰だって嫌な気持になり、良い関係を築きたいとは思えません。また、楽しい時間を一緒に過ごすのも重要です。子どもの一番大事な仕事は遊ぶことです。それは高校生だろうが幼稚園生だろうが同じです。そして、遊びとは楽しくあるべきです。その楽しい時間を共有することで、さらなる親子関係の向上につなげられるのです。
子どもの事を理解する
子どもの事を本人の視点から理解してあげる事も欠かせません。
大前提として、親の仕事の都合でアメリカに来なくてはいけなくなった子どもは、大半が「子どもの意志でアメリカに来たわけではない」という事実を認めてあげる事です。これを言うとほぼ全ての親御さんに、「渡米前に子どもからちゃんと了承を得た。」「子どもは納得している」という言葉を聞かされるのですが、それは子ども目線で見れていない証拠です。子どもの意志がまずありきで決まった事で無ければ、そこに子どものコントロールはなかったと考えるべきです。人間にとって、年齢関係なく、コントロールがないというのは非常に辛い事なのです。その大前提を理解してあげるかそうでないかで、子どもへの理解度が全然違ってきます。逆に、なかなか親の目線からでしか子どもを理解してあげられない場合、子どもの心の病の治療はうまくいかない事が多いです。
また、アメリカに来た後に長期間滞在すれば、その土地の文化を子どもは取り込み、文化的アイデンティティが日本人100%ではなくなります。親がアメリカナイズされていない場合、同じ家に住んでいるにもかかわらず違う文化の人と一緒に住んでいるようなものなのです。この親と子の文化的ギャップというのは非常に影響力の強いファクターであり、それがどのように影響しているかも理解してあげる必要があるでしょう。
カウンセリングを受けさせる
最後になりますが、上記を試してみても心の病の症状が向上しなければ、カウンセリングを受けさせるべきでしょう。前回も申し上げましたが、心の病とは非常に多くの場合において心理カウンセラーの介入が入らないと治ることは難しいです。また、親御さんも第三者の介入が入らないとなかなか今までの子育ての仕方を変える事は難しいので、そういう面からも心理カウンセラーからの助けを得るのが最善でしょう。
以上、正しい知識を得て頂ければ幸いです。
荒川龍也
カリフォルニア州公認心理カウンセラー