家族ができること~大人編~―海外駐在員とその家族の心の健康 (11)
2023.10.14
こんにちは
カリフォルニア州公認心理カウンセラーの荒川龍也です。
この記事ではよく聞かれる「心の病になってしまった人のために家族は何ができるのか」についてお話ししたいと思います。今回は、大人の方が心の病になってしまった時に家族がどのようにサポートができるかについてお話致します。子どもへの対応については別の機会でお話いたします。
できる事は非常に多くありますが、以下、特に重要な三つを挙げました。
話を聞いてあげる事
話を聞くことが一番簡単なようで難しいです。しかし、話を聞いてあげる事が心の病で苦しむ本人にとって一番の助けになります。
話を聞く時にやるべきことは
- 頷いてあげる等、話を聞いていることをボディランゲージをもって示す
- しっかりと聞く姿勢を示す(スマホを見ながら等はさける)
- 気持ちを代弁してあげる
逆にやるべきではない事は
- ○○をすればいい、□□はしてはいけない等のアドバイスをあげる
- 自分や他の人が似たような状況を過去に経験し、どのように克服したかを話す
- 話を逸らしたり、無理やり元気づけようとする
話を聞くことは簡単な事ではありません。非常に多くの場合において、聞いている側はアドバイスを与えたがってしまいます。しかし、アドバイスをもらった側というのはアドバイス通りにしないだけではなく、「理解してもらえていない」と感じがちです。また、自分や他の人の話も結局アドバイスをしているのと変わりません。当然のことながら、全く同じ状況など存在しませんので、そのような話をされても「理解されていない」と感じてしまうものです。そうではなくて、とにかくただただ本人の言いたい事に耳を傾けましょう。
偏見の目で見ない事
例えば、うつ病の症状の一つに「やる気がない」というのがあります。この症状が原因で朝起きるのが通常よりも辛かったり、仕事に手がつかなかったり、普段できていたことが様々な場面で困難になります。
こういった様子を家族の方が見て、イライラするなとは言いません。しかし、辛抱強く待ってあげる事が重要です。例えば、右手を骨折してギブスをしている人に右手を使えとは言いませんよね?それと同じことです。心の病とは目に見えないぶんだけ、「なぜ普段通りにできないのか」と周りが理解するのは難しいことが多いです。しかし、周りがイライラしそれを本人にぶつけてしまっては、心の病が治るどころか「理解してもらえない」という孤独感を感じ、孤独感は心の病というモンスターにとって最高の餌なので、さらに心の病が悪化してしまいかねません。
イライラしてもいいです。それを出さなければいいのです。そのイライラは友人に聞いてもらいましょう。それよりも、理解を示してあげる事が本人にとっては大きな助けになります。
カウンセリングを受けさせること
非常に多くの場合において、心の病とは専門家の介入が入らなければ治らないか、一時的に治ったように見えても、またすぐに再発してしまうかのどちらかです。まずは心理カウンセラーに診てもらう事が大事でしょう。その際に、心の病を患っている本人が自身の事を「弱い人間」と考えてしまい、そもそも心の病である可能性が高い事すらも認めたがらない方が大勢いらっしゃいますが、心の病とは誰でも患ってしまう可能性はあります。心の病だから心が弱いというわけではない事を伝えてあげる事も重要でしょう。
最後に、本人が少しでも「受けてみよう」という気にならなければカウンセリングがうまくいかない事もまた事実です。根気強く本人が受ける気になるのを待つのも必要かもしれません。
最後になりますが、心の病で困っている方の身の危険等があると判断される場合は緊急電話に連絡することが一番安全な選択です。
以上、正しい知識を得て頂ければ幸いです。
荒川龍也
カリフォルニア州公認心理カウンセラー