パートナーの心の健康~海外駐在員とその家族の心の健康 (12)
2023.11.05
こんにちは
カリフォルニア州公認心理カウンセラーの荒川龍也です。
海外駐在員とその家族の心の健康シリーズ、今回で12回目となります。今回の記事では、駐在員としてアメリカにいらっしゃった方のパートナーの方の心の健康についてお話いたします。大変残念なことではございますが、パートナーの方が心の病になってしまうケースはよくある事です。パートナーの方のよくある苦労とそれがどのように心の病の原因になりやすいかについてお話いたします。(注: 非常に多くの場合において、駐在員は男性でパートナーの方は女性ですので、この記事ではそういったケースに絞って書かせて頂きます。)
英語
まずは英語が最大の壁として立ちはだかります。世間では「○○をすれば英語が話せるようになる」という誇大広告が山のようにあります。このような広告に騙されてしまったり、イメージとしてよくある「アメリカにいれば自然と話せるようになる」という期待を持ってしまう方が非常に多いです。
しかし、現実は残酷です。誇大広告を信じて○○をしたから話せるようになるわけでも、アメリカにいるから自然と話せるようになるわけでもありません。さらに、駐在員のパートナーの方の場合、日本語が話せる方が多い環境に置かれる場合も多く、英語を使う機会が無ければ英語が話せるようになることも難しくなってしまいます。
その国の言語が話せないというのは非常に苦痛です。例えば生活するうえでやらなければならない事は必ずあります。銀行に行く、スーパーで買い物をする、壊れた何かを直してもらう等々、それら全て英語となります。それができないということであれば、それをやること自体が億劫になり、場合によってはかなり後回しにしてしまったり、最悪の場合やらないなんてこともあるでしょう。
日本にいてできたことが、他の国ではできないというのは大きな負担となり、これがうつ病の原因になりかねません。
友達・ママ友
良くお聞きするパートナーの方の苦労が友達・ママ友に関する事です。どんな場所にいようとも友達は必要です。しかし、「言うは易く行うは難し」とはよく言ったもので、実際に気の合う人を見つけ、友達になり、仲良くなるまでにはそれなりの努力や時間を要します。また、努力し時間を費やしたからと言って必ずしも見つかるものではありません。さらに非常に多くの方に当てはまる事ですが、大人になってからそのような気のおけない友人を作るのは簡単な事ではありません。
さらに難しいのはママ友です。子どもを通じて仲良くなれたり、気が合う人が見つかればいいのですが、特に仲が良いわけではないし、気が合うわけではないけども子ども同士が仲が良いからという事で付き合わなくてはいけないケースが多いです。これがまた大きな負担になります。
新しい土地で家族以外の人と満足のいく付き合いができなければ、それが孤独感に繋がっていき、うつ病の原因になってしまいかねません。
理想と現実のギャップ
日本にいる方がもつアメリカに対してのイメージと実際のアメリカに大きなギャップがあることは非常によくある事です。例えば、NYがメディア等で紹介される場合、電車が使用されているので、日本のように公共交通機関だけで生活できると思いがちですが、実際にはアメリカのほとんどの場所では車がないと生活しづらく、日本ほど公共交通機関が発達していません。
この理想と現実のギャップに苦しむパートナーの方は珍しくありません。「○○だと思ったのに、実際はそうでもなかった」というのは他の国に住めばよくある事かもしれません。これも一つの喪失であり、人によってどのような反応を示すかは違ってきます。しかし、喪失を受け止めきれない人の場合は、うつ病などの心の病に患ってしまう恐れがあります。
以上、正しい知識を得て頂ければ幸いです。
荒川龍也
カリフォルニア州公認心理カウンセラー