以心伝心は存在しない—日本文化とメンタルヘルス(3)
2024.11.08
こんにちは、カリフォルニア州公認心理カウンセラーの荒川龍也です。
日本文化とメンタルヘルスに関して、3回目の記事です。
前回と前々回は、人と違う事が間違いとされてしまう文化とそれがどのようにメンタルヘルスに悪影響を及ぼすかについてお話いたしました。
今回は、「以心伝心」についてお話いたします。
以心伝心、言わなくても言いたい事は伝わるというのは非常に強い日本文化の特徴の一つです。実際には気づかないだけで、生活の中の様々な場面で以心伝心は存在するものとして行動している場面が山ほどあります。
以心伝心に関して、よくある例が以下になります。
親やコーチ・監督などが、期待している子どもや選手にはガミガミうるさい事を言うけれども、なぜそんなにガミガミ言うかといえばそれは期待の裏返しであると。時には酷いことを言う。なぜならそれは愛情をもとにした発言なのだと。
人はエスパーではありません。伝えたい事を伝えるために言葉を生みだしたのに、伝える言葉に隠された意図を読まなくてはいけないなどというのは、無理難題です。
しかし、それを強いられるのが日本文化です。
結果、メンタルヘルスに悪影響を及ぼしていきます。
例えば、前述した例でいえば、「気にかけてもらえているから、愛されているからダメ出しされるんだ」と思える人はなかなかいません。それは年齢関係なく、子どもでも大人でも同じです。人はダメ出しされれば嫌な気持ちになって当然なのです。この場合、うつ病や不安障害の原因になってしまいかねません。
また、以心伝心は人間関係の根本の問題にもなりがちです。「あの人は○○だと思っているに違いない」「あの人は◇◇といっているけども実際は違う意味で言っているだろう」等々、本当のことを言わないという文化が疑心暗鬼を何倍にも膨れ上がらせてしまいます。これらもまた、うつ病や不安障害などのメンテナンスの問題を引き起こしがちです。
ハッキリ申し上げます。
以心伝心は存在しません。もちろん、言わなくても伝わっていることがある事は否定しません。しかし、この日本文化的な考え方が原因で心の病になってしまった人を大勢診てきたので、ここまで強く断言できてしまう事もまた事実です。
以上、心について正しい理解をして頂ければ幸いです。
荒川龍也
Licensed Marriage and Family Therapist